介護士K(著久坂部洋)を読んだ感想

 

介護士K

介護士K

 

 介護の現在のあらゆる問題を十二分に取り入れた内容となっています。出だしは有料老人ホームでの入居者転落死亡はそこで働く介護士が突き落としたのではないか?という疑問から始まります。それが7、8階の高さから落ちたらたとえ足から飛び降りても重さで頭が先に落ちてもおかしくないが、4階から落ちた場合反転することはないから足を折ることはあっても頭から落ちることはない。死亡者は首の骨を折っている。そういうものか、という驚きから始まります。

 

次に生きる望みを失っている高齢者を生かしておくことはエゴであり傲慢なのではないか?という視点です。だから死なせた方が良いという思考の転換です。私は確かにエゴであるかもしれないと思いつつ、それが死なせたら良いという転換には全くいきませんが、それに悩む一人の青年K。そして、私がこの本で一番興味を持ったのはその青年Kを示唆した人物、黒原医師です。

 

この人物の考え方は常軌を逸しているも何か筋を持っている。まるで映画「羊たちの沈黙」のハンニバルレクターを彷彿させるような人物にうつってしまった。黒原の最後の結末は私にとって一番驚くものでしたが、少し意味が分からなかった。