保守とは何か?が書かれています。

保守について書かれている本があったので忘備録的に書きとどめておきます。

 

保守と立憲(中島岳志著P11~P13引用)

冷静に人間を見つめてみると、どんなに頭のいい人でも世界を完全に把握することはできず、時に過ちや誤認を犯してしまうことに気づきます。どんなに立派な人でも、エゴイズムや嫉妬から完全に自由になることはできません。人間は知的にも倫理的にも不完全な存在であり、これは過去・現在・未来にわたって一貫しています。

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人間は有限なる存在で、完全性を手にすることなどあり得ません。パーフェクトな人間など、これまでの歴史の中には誰ひとりとして存在せず、またこれからの世界にも存在し得ません、だとすれば、不完全な人間が作る社会は、永遠に不完全であって、完成などしない。

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パークは個人の理性を超えたものの中に英知が宿っていると考え、その存在に注目しました。それは多くの庶民によって蓄積されてきた良識や経験知であり、歴史の風雪に耐えてきた伝統です。頭のいいエリートが書いた設計図や思想よりも、多くの無名の人たちが長い時間をかけて紡ぎ上げてきた経験知や良識に、まずは依拠してみるのが重要なのではないかと考えました。

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しかし、過去の人間も、今の人間と同様に不完全です。いくら集合的な経験知と言っても、その中には過ちも含まれています。限界もあるでしょう。しかも、世の中はどんどん変わっていきます。五十年前には素晴らしかった福祉制度でも、人口構成が違ってくれば、そのままでは意味をなしません。やっぱり変えていかなければならない。大切なものを守るためには、変わっていかなければならない。そのため、バークは「保守するための改革」が重要だと言いました。

 

ただし、それは左派の革命のように、「これが正しい」と一気に世の中を改造しようとするのではなく、歴史の中の様々な英知に耳を傾けながら、徐々に変えていくことが望ましいと言います。改革は常に漸進的(グラジュアル)でなければならない。保守が重視するのは、「革命」ではなく、「永遠の微調整」です。そこには人間の能力に対する過信をいさめ、過去の人間によって蓄積されてきた暗黙知に対する畏怖の念が反映されています。